京都「東寺」完全ガイド – 日本一の五重塔が聳える真言密教の聖地
今回は、京都駅から最も近い世界遺産「東寺」をお届けします。平安京遷都とともに創建され、弘法大師空海が真言密教の中心道場として整えた、1200年以上の歴史を持つ古都京都のシンボルです。
東寺とは – 平安京とともに歩んだ千年の歴史
東寺(正式名称:教王護国寺)は、794年の平安京遷都とともに、桓武天皇によって国家を護る官寺として創建されました。平安京の正門である羅城門の東に建立されたことから「東寺」と呼ばれ、西側には対をなす「西寺」も建てられましたが、西寺は焼失して現存していません。
823年、嵯峨天皇から弘法大師空海(774-835年)に東寺が託されると、空海はここを日本で最初の本格的な真言密教の根本道場として整備しました。「教えの王、国を護る」という正式名称が示すとおり、東寺は国家の安寧を祈る重要な寺院として、また庶民から皇族まで広く信仰される「お大師様の寺」として、千年以上にわたり人々の心の拠り所となってきました。
1994年には「古都京都の文化財」の構成資産として、ユネスコの世界文化遺産に登録され、現在も年間数百万人の参拝者が訪れる京都を代表する観光地となっています。
東寺が歩んだ歴史 – 戦火と再生の物語
平安時代 – 真言密教の中心地として
空海が東寺を託された後、彼は密教の教えを広めるための拠点として寺院を整備しました。五重塔の建立に着手したのも空海ですが、実際の完成は空海没後の9世紀末でした。講堂には空海が構想した「立体曼荼羅」が安置され、密教の宇宙観を視覚的に表現する世界でも類を見ない空間が創出されました。
中世以降 – 戦火と復興の繰り返し
東寺は長い歴史の中で、幾度も火災や戦火に見舞われました。五重塔は落雷などにより四度焼失し、現在の塔は1644年に徳川家光によって再建された五代目です。しかし、そのたびに人々の信仰心によって復興され、今日まで守り伝えられてきました。
庶民の信仰の場として
弘法大師空海への篤い信仰から、東寺は「お大師様の寺」として庶民にも親しまれてきました。毎月21日に開催される「弘法市」は、空海の命日にちなんだ縁日で、江戸時代から続く伝統的な市場文化を今に伝えています。

必見スポット完全ガイド
1. 五重塔(国宝)- 日本一高い木造塔
東寺のシンボルであり、京都のランドマークとして親しまれる五重塔は、高さ約55メートル(正確には54.8メートル)を誇る、日本一高い木造塔です。新幹線の車窓からも見える堂々とした姿は、まさに古都京都の象徴といえます。
建築の歴史と特徴
826年に弘法大師空海が建立に着手しましたが、実際の完成は空海没後の9世紀末でした。その後、落雷などにより四度焼失し、現在の塔は1644年に徳川家光によって再建された五代目です。約380年の歴史を持つこの塔は、日本の伝統建築技術の粋を集めた傑作として高く評価されています。
塔は地震に強い構造となっており、中心に立つ「心柱」が独立して建物を支える耐震構造は、現代の建築技術にも影響を与えています。各層の屋根が下から上に向かって小さくなる美しいプロポーションは、遠くから見ても近くで見ても均整のとれた美しさを保っています。
特別公開の内部拝観
春(4月下旬〜5月下旬)と秋(10月下旬〜11月下旬)の特別公開期間には、通常は見られない初層内部を拝観できます。内部には密教の世界観を表現した仏像群が安置されており、中央の大日如来を中心に、四方に金剛界四仏と八大菩薩が配置されています。これらの仏像は空海の密教思想を立体的に表現したもので、まさに密教美術の宝庫といえます。
2. 金堂(国宝)- 東寺の本堂
東寺の本堂である金堂は、桃山時代の1603年に豊臣秀頼によって再建された建物で、国宝に指定されています。重層入母屋造の堂々たる建築は、平安時代の建築様式を今に伝える貴重な遺構です。
本尊・薬師如来坐像(国宝)
金堂の中央には、本尊の薬師如来坐像が安置されています。高さ約2.9メートルの巨大な像で、病や苦しみから人々を救ってくれる仏様として、古くから篤い信仰を集めてきました。右手を上げて人々を安心させる「施無畏印」、左手には薬壺を持つ姿は、慈悲深さと威厳を兼ね備えています。
両脇には日光菩薩・月光菩薩が配置され、台座の周囲には十二神将が守護しています。これらの仏像群が創り出す荘厳な空間は、訪れる人々に深い感動を与えます。
3. 講堂(重要文化財)- 空海が創出した立体曼荼羅
講堂は、弘法大師空海が密教の教えを説くために建てた建物で、1486年に再建された現在の建物は重要文化財に指定されています。
世界唯一の立体曼荼羅
講堂内部には、空海が構想した「立体曼荼羅」が安置されています。21体の仏像(現存は15体が平安時代の作、6体は後補)が配置されたこの空間は、密教の教えを立体的に表現した世界でも類を見ない芸術作品です。
中央には大日如来を中心とした五智如来が配置され、その周囲を五大菩薩、五大明王、四天王と梵天・帝釈天が取り囲みます。これは密教の宇宙観を視覚化したもので、仏の世界(悟りの世界)を立体的に表現しています。
特に五大明王の迫力ある姿は圧巻で、中央の不動明王を中心に、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王が配置されています。これらの明王は、煩悩を打ち砕く強い力を象徴しており、その表情や姿勢から密教の力強さを感じることができます。
4. 観智院(国宝)- 書院建築の傑作
観智院は、東寺の子院の一つで、1308年に創建された建物です。現在の建物は1605年に再建されたもので、客殿は国宝に指定されています。書院造の建築様式は、室町時代の文化を今に伝える貴重な遺構です。
内部には、宮本武蔵が描いたとされる「鷲の図」や、狩野派による襖絵などが残されており、日本の絵画芸術の粋を鑑賞できます。静寂な庭園と相まって、禅的な美しさを感じられる空間となっています。
5. 宝物館 – 密教美術の宝庫
春と秋の特別公開期間には、宝物館が開館し、東寺が所蔵する数多くの国宝・重要文化財を間近で見ることができます。弘法大師空海の真筆とされる書や、密教法具、仏画など、密教美術の至宝が展示されています。
四季の東寺 – 季節ごとの美しさ
春(3月中旬〜4月中旬)- 夜桜ライトアップ
東寺の境内には約200本の桜が植えられており、特に「不二桜」と呼ばれる樹齢120年を超える八重紅しだれ桜は見事です。春のライトアップ期間には、五重塔と桜が幻想的に照らし出され、水面に映る姿と相まって息をのむ美しさを見せます。
期間:3月中旬〜4月中旬(桜の開花状況により変動) 時間:18:00〜21:30(受付終了21:00) 料金:大人1,000円程度(年により変動)
初夏(4月下旬〜5月初旬)- 新緑ライトアップ
新緑の季節には、青々とした木々と朱色の建物のコントラストが美しく、五重塔を囲む緑が鮮やかに輝きます。ゴールデンウィーク期間には、新緑のライトアップも実施されます。
秋(10月下旬〜12月初旬)- 紅葉ライトアップ
秋の東寺は、境内全体が赤や黄色に染まり、特に瓢箪池周辺の紅葉は見事です。秋のライトアップ期間には、燃えるような紅葉と五重塔の幻想的な光景を楽しむことができます。
期間:10月下旬〜12月初旬(紅葉の状況により変動) 時間:18:00〜21:30(受付終了21:00) 料金:大人1,000円程度(年により変動)
冬 – 静寂の美しさ
観光客が比較的少ない冬の東寺は、静寂な雰囲気の中でゆっくりと参拝できます。雪が降れば、五重塔が雪化粧した姿は水墨画のような美しさです。

弘法市(こうぼういち)- 京都最大の縁日市
毎月21日は弘法大師空海の命日にあたり、東寺では「弘法市」と呼ばれる縁日市が開催されます。約1,200店もの露店が境内に並び、骨董品、古着、陶器、植木、食べ物など、あらゆるものが売られています。
地元の人々や観光客で賑わうこの市は、江戸時代から続く伝統的な市場文化を今に伝える貴重な場です。掘り出し物を探す楽しみや、地元の人々との交流、京都の食文化を体験できる絶好の機会です。
開催日:毎月21日(雨天決行) 時間:早朝〜16:00頃(店により異なる) 特別な日:
- 初弘法(1月21日):年始の市で特に賑わいます
- 終い弘法(12月21日):年末の市で多くの参拝者が訪れます
拝観情報とアクセス
拝観時間
境内開門:5:00〜17:00(無料エリア) 金堂・講堂:8:00〜17:00(受付終了16:30) 観智院:9:00〜17:00(受付終了16:30) 宝物館:特別公開期間のみ 9:00〜17:00(受付終了16:30)
拝観料(2025年3月20日改定後)
通常期間:
- 金堂・講堂:大人800円、高校生400円、中学生以下300円
- 観智院:大人・高校生600円、中学生以下300円
- 共通券:大人・高校生1,200円、中学生以下500円
特別公開期間(五重塔初層内部公開時):
- 五重塔初層・金堂・講堂:大人1,200円、高校生700円、中学生以下500円
ライトアップ期間:
- 夜間特別拝観:大人1,000円程度(年により変動)
アクセス方法
住所:〒601-8473 京都市南区九条町1番地 電話:075-691-3325
電車でのアクセス(おすすめ):
- JR京都駅八条口から徒歩約15分(約1.1km)
- 近鉄京都線「東寺」駅から徒歩約10分(約0.6km)
バスでのアクセス:
- 市バス19、78系統「東寺南門前」下車すぐ
- 市バス42系統「東寺東門前」下車すぐ
京都駅からの徒歩ルート: 八条口を出て南西方向へ、九条通を西へ進むと東寺の南門に到着します。五重塔を目印に歩けば迷うことはありません。
訪問のコツとおすすめ時間
ベストタイム
- 早朝(8:00開門直後):観光客が少なく、静寂な雰囲気の中で参拝できます
- 平日の午前中:土日祝日は混雑するため、可能であれば平日がおすすめ
- ライトアップ期間の夕暮れ時:昼の拝観後、一度退出して夜間拝観に再入場するのもおすすめ
所要時間
- 金堂・講堂のみ:約40分〜1時間
- 観智院を含む:約1.5時間
- 特別公開期間(五重塔内部含む):約2時間
- 弘法市の日:市の見学も含めると2〜3時間
持参すると便利なもの
- カメラ:五重塔の撮影に最適
- 歩きやすい靴:境内は広く、砂利道もあります
- 現金:弘法市では現金が必要です

周辺の見どころとモデルコース
京都駅周辺の観光スポット
京都タワー(徒歩20分):京都駅前のランドマーク、展望台からは東寺も見渡せます
西本願寺(徒歩15分):世界遺産の浄土真宗本山で、国宝の御影堂・阿弥陀堂が見事
梅小路公園(徒歩20分):京都水族館や京都鉄道博物館がある広大な公園
おすすめモデルコース
半日コース(3時間):
- 東寺拝観(1.5時間)
- 西本願寺拝観(1時間)
- 京都駅周辺でランチ・お土産購入(30分)
一日コース(京都駅発着):
- 東寺拝観(1.5時間)
- 伏見稲荷大社へ移動・参拝(2時間)
- 清水寺へ移動・参拝(2時間)
- 京都駅に戻る
東寺の文化的意義 – 真言密教の世界
東寺は、弘法大師空海が日本に伝えた真言密教の中心道場として、日本の仏教文化に計り知れない影響を与えてきました。密教とは、言葉では伝えられない深遠な教えを、象徴的な仏像や曼荼羅、儀式を通じて体得する仏教の一派です。
講堂の立体曼荼羅は、この密教の教えを視覚的・空間的に表現した世界唯一の芸術作品であり、仏教美術史上においても極めて重要な位置を占めています。21体の仏像が織りなす宇宙観は、単なる宗教的造形を超えて、人間の精神世界を表現した芸術作品として、世界中の研究者や芸術家から注目されています。
まとめ
東寺は、1200年の歴史、日本一の五重塔、空海の精神性、そして四季折々の自然美が融合した、京都を代表する世界遺産です。京都駅から徒歩圏内という便利な立地ながら、平安時代の息吹を今に伝える貴重な文化財として、訪日旅行者必見のスポットといえます。
特に五重塔の威容、立体曼荼羅の荘厳さ、そして弘法市の活気は、他では味わえない東寺ならではの魅力です。春の桜、秋の紅葉、そして夜のライトアップと、季節や時間帯によって全く異なる表情を見せる東寺を、ぜひ訪れてみてください。
古都京都の玄関口で、日本の歴史と仏教文化の深淵に触れる特別な体験を、ぜひ東寺でお楽しみください。
当店舗「TRAVELBAG」に荷物をお預けいただいたり、配送サービスをご利用いただくことで、身軽に東寺の広い境内散策や京都駅周辺の観光をお楽しみいただけます。ぜひ活用いただき、存分に京都の世界遺産と日本の仏教文化を満喫してください。

