京都「寂光院」完全ガイド – 建礼門院が過ごした平家物語ゆかりの尼寺
京都府おすすめ観光スポット紹介シリーズ第22回目は、京都市街から北へ、大原の里に静かに佇む「寂光院」をお届けします。1,400年以上の歴史を持ち、日本の古典文学『平家物語』に登場する建礼門院ゆかりの地として知られる、訪れる人々に静寂と心の安らぎをもたらす天台宗の尼寺です。
寂光院とは – 聖徳太子が創建した古刹
寂光院(じゃっこういん)は、京都市左京区大原に位置する天台宗の尼寺です。推古2年(594年)、聖徳太子によって創建されたと伝えられ、1,400年以上の歴史を持つ古刹です。
三千院のある大原の中心部から、さらに山の奥へと進んだ静寂な場所にあり、周囲を緑豊かな山々に囲まれた小さな寺院です。その小ささゆえに、かえって深い静寂と精神性を感じることができる特別な場所となっています。
主な特徴
宗派:天台宗
山号:玉泉寺
本尊:六万体地蔵菩薩立像
創建:594年(推古2年)
開基:聖徳太子
特徴:建礼門院ゆかりの地、平家物語の舞台、大原女発祥の地
寂光院の歴史 – 栄華と悲劇の物語
聖徳太子による創建
寂光院は推古2年(594年)、聖徳太子が父・用明天皇の菩提を弔うために建立したと伝えられています。初代住持は聖徳太子の乳母であった玉照姫(慧善比丘尼)で、以来、代々高貴な家柄の姫君たちが住持を務めてきた由緒ある尼寺です。
天台宗の尼寺として、山号を玉泉寺といい、長い歴史の中で多くの女性たちの信仰と祈りの場となってきました。
建礼門院徳子の物語 – 平家物語の舞台
寂光院を最も有名にしたのは、第3代住持となった建礼門院徳子の物語です。
栄華の頂点から
建礼門院徳子(1155-1213年)は、平清盛の娘として生まれ、高倉天皇の中宮となり、後の安徳天皇を産みました。平家一門が権勢を誇った時代、彼女は日本で最も高貴な女性の一人でした。
壇ノ浦の悲劇
しかし、源平合戦で平家は敗北。1185年、壇ノ浦の戦いで平家は滅亡しました。この戦いで、建礼門院はわずか8歳の我が子・安徳天皇を抱いて入水しますが、彼女だけが助けられ、生き残ってしまいます。
父・平清盛、夫・高倉天皇(既に没)、そして最愛の我が子・安徳天皇を失った建礼門院の悲しみは計り知れないものでした。
寂光院での隠棲
文治元年(1185年)9月、建礼門院は出家し、真如覚比丘尼と名乗ってこの寂光院に入寺しました。わずか30歳でした。
草深い大原の里で、侍女たちとともに、平家一門と我が子の菩提を弔いながら、文建保元年(1213年)に59歳で亡くなるまで、約28年間をこの地で過ごしました。
『平家物語』の「大原御幸」
文治2年(1186年)の春、後白河法皇が寂光院を訪れ、隠棲する建礼門院と対面した出来事は、『平家物語』の最終章「大原御幸(おおはらごこう)」の段に美しく描かれています。
かつての栄華から一転、尼僧として静かに暮らす建礼門院との再会の場面は、無常観に満ちた日本文学の名場面として今も語り継がれています。この対面で、建礼門院は平家一門の滅亡と自身の苦悩を語り、後白河法皇を涙させたと伝えられています。
大原女(おはらめ)の伝説
寂光院の第2代住持・阿波内侍は、崇徳天皇の寵愛を受けた女官でしたが、保元の乱後に出家して入寺しました。彼女は生計を立てるために柴を売り、頭に柴を載せて京の都へ売りに行く姿が、京都の伝統的な風俗「大原女」のモデルとなったと伝えられています。
大原女は、頭に薪や柴を載せて京の都で売り歩く女性たちのことで、京都の風物詩として江戸時代まで続きました。

境内の見どころ
1. 石段参道 – モミジのトンネル
寂光院への参道は、三千院からさらに奥へ、田園風景の中を歩いて約15分の場所にあります。山門へと続く石段参道には、モミジの古木が並び、特に新緑と紅葉の季節には息をのむ美しさです。
秋には参道が真っ赤に染まり、京都の紅葉名所の一つとして知られています。石段を登りながら、建礼門院もこの道を歩いたのだと思うと、歴史の重みを感じます。
2. 山門
質素な造りの山門をくぐると、小さいながらも静寂に満ちた境内が広がります。山門の前には、建礼門院の歴史を説明する案内板があり、訪問前に読むことでより深い理解が得られます。
3. 本堂 – 復元された建礼門院の祈りの場
現在の本堂は、2000年5月に発生した放火事件による火災後、古式に忠実に復元されたものです。本堂は平安時代の様式を再現した美しい建物で、2005年に再建されました。
本尊・六万体地蔵菩薩立像
本堂には六万体地蔵菩薩立像が安置されています。鎌倉時代の制作当時の姿を完全に復元したこの像は、美しい彩色が施され、訪れる人々を静かに迎えてくれます。
火災で焼損した旧本尊(重要文化財指定されていた平安時代の像)は修復され、現在は境内奥の収蔵庫「寂光院蔵」に安置されており、秋には特別公開が行われることもあります。
4. 平家物語の庭園 – 千年の姫小松
本堂前西側には、『平家物語』にも描かれた風情ある庭園が広がります。心字池を中心に配された庭園で、建礼門院が後白河法皇と対面した場面にも登場します。
姫小松
特に有名なのが「姫小松」です。『平家物語』の中で「池のうきくさ 浪にただよい 錦をさらすかとあやまたる 中嶋の松にかかれる藤なみの うら紫にさける色」と詠まれた歴史ある松で、千年以上の樹齢を持つとされています。
現在の姫小松は代替わりしていますが、建礼門院が眺めた風景を今に伝える貴重な存在です。
汀の桜
池のほとりには桜の木があり、春には美しい花を咲かせます。苔むした石、池、桜、松が織りなす日本庭園の美は、時を超えた静寂を感じさせます。
5. 建礼門院御庵室跡
本堂の裏手には、建礼門院が実際に生活していたとされる御庵室跡があります。今は石碑が立つのみですが、ここで建礼門院が28年間、平家一門の菩提を弔いながら暮らしたと思うと、深い感慨を覚えます。
6. 建礼門院大原西陵(御陵)
寂光院の裏山には、建礼門院のお墓である「建礼門院大原西陵」があります。宮内庁が管理する皇族の陵墓で、静寂な森の中にひっそりと佇んでいます。
7. 鐘楼
境内には小さな鐘楼があり、参拝者も鐘を撞くことができます(時間帯による)。鐘の音が大原の里に響き渡る様子は、まさに『平家物語』の世界を感じさせます。

四季の魅力
春(3月〜5月)- 桜と新緑
春には庭園の桜が咲き誇り、新緑が美しい季節です。石段参道のモミジも若葉を茂らせ、清々しい雰囲気に包まれます。
初夏(6月〜7月)- 深緑と静寂
梅雨の時期は訪問者も少なく、静寂な雰囲気の中で参拝できます。深緑に覆われた境内は、建礼門院が過ごした静かな日々を想像させます。
秋(11月中旬〜下旬)- 紅葉の絶景
寂光院の最大の見どころは秋の紅葉です。石段参道が真っ赤に染まり、本堂越しに見る紅葉の景色は息をのむ美しさです。
紅葉シーズンは混雑しますが、それでも訪れる価値のある絶景です。特に夕方の光が差し込む時間帯は、幻想的な美しさを見せます。
冬(12月〜2月)- 雪景色
雪が降ると、寂光院は水墨画のような静寂な美しさに包まれます。訪問者も少なく、建礼門院の孤独な心境に思いを馳せることができます。
拝観情報とアクセス
基本情報
住所:〒601-1248 京都府京都市左京区大原草生町676
電話:075-744-3341
公式サイト:https://www.jakkoin.jp/
拝観時間
通常:9:00〜17:00(季節により変動あり)
12月31日:10:30〜15:00
拝観料
大人:600円
中学生:350円
小学生:100円
アクセス方法
京都駅から:
- 京都駅から京都バス17・18系統「大原」行きに乗車(約76分)
- 終点「大原」下車、徒歩約15分
地下鉄+バス(おすすめ):
- 地下鉄烏丸線「国際会館駅」へ(約20分)
- 京都バス19系統「大原」下車(約20分)
- 徒歩約15分
三千院から:徒歩約15分(約1km)
所要時間
境内参拝のみ:約30分
じっくり参拝:約45分〜1時間

周辺の見どころ
三千院
寂光院から徒歩約15分。大原を代表する寺院で、美しい苔庭とわらべ地蔵で知られています。
実光院・宝泉院
三千院の近くにある小さな寺院。それぞれ独特の魅力を持つ庭園があります。
大原の里
しば漬け発祥の地として知られ、漬物店や茶屋が点在する静かな山里です。大原女の像も立っています。
訪問のコツと注意事項
おすすめの訪問方法
午前中に三千院や実光院を先に訪れ、午後に寂光院へ
所要時間:大原エリア全体で半日〜一日
服装と持ち物
- 歩きやすい靴:石段や坂道が多いです
- 季節に応じた服装:市街地より気温が低いです
- カメラ:紅葉シーズンは特に撮影スポット
混雑回避
- 紅葉シーズン(11月)は混雑します
- 平日または早朝の訪問がおすすめ
- 春や初夏は比較的空いています
参拝のマナー
- 小さな尼寺なので、静かに参拝しましょう
- 建礼門院の御陵は宮内庁管理のため、敬意を持って
- 写真撮影は可能ですが、本堂内は確認を
まとめ
寂光院は、平家物語の悲劇のヒロイン・建礼門院が余生を過ごした地として、日本の歴史と文学の深い結びつきを感じられる特別な場所です。1,400年以上の歴史を持つこの尼寺は、京都の喧騒から離れた大原の自然の中で、訪れる人々に静寂と癒しのひとときを提供してくれます。
栄華の頂点から、すべてを失い、大原の山里で静かに暮らした建礼門院。その28年間の祈りと悲しみが、今もこの小さな寺院に息づいています。石段を登り、庭園を眺め、建礼門院が見た風景に思いを馳せると、『平家物語』の世界が生き生きと蘇ってきます。
日本の古典文学に興味がある方、静かな寺院で心を落ち着けたい方、そして京都の隠れた名所を探している方には、ぜひ訪れていただきたいスポットです。三千院と合わせて訪れることで、大原の里の魅力を存分に味わうことができるでしょう。
京都を訪れた際は、ぜひ大原まで足を延ばし、寂光院で建礼門院の物語と日本の歴史の深さに触れてみてください。
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