京都「三千院」完全ガイド – 苔むす庭園とわらべ地蔵が織りなす東洋の宝石箱
京都府おすすめ観光スポット紹介シリーズ第21回目は、京都市街地から北へ、比叡山の麓・大原の里に佇む「三千院」をお届けします。作家・井上靖が「東洋の宝石箱」と絶賛した美しい苔庭、国宝の阿弥陀三尊像、そして可愛らしいわらべ地蔵が迎えてくれる、天台宗の門跡寺院です。
三千院とは – 1200年の歴史を持つ門跡寺院
三千院(さんぜんいん)は、京都市左京区大原に位置する天台宗の門跡寺院です。「門跡寺院」とは、皇族や摂関家の子弟が住職を務める格式高い寺院のことで、三千院は天台宗の五門跡の一つとして、日本の仏教史において重要な役割を果たしてきました。
京都市街から北へ約18キロ、バスで約1時間の距離にある大原の里は、古くから「山里」として知られ、静寂と自然の美しさに満ちた場所です。三千院はその大原を代表する寺院として、特に美しい苔庭と紅葉で知られています。
主な特徴
宗派:天台宗(天台宗五門跡の一つ)
本尊:薬師如来
創建:788年(延暦7年)
国宝:阿弥陀三尊坐像(往生極楽院)
見どころ:苔庭、わらべ地蔵、紅葉、国宝仏像
三千院の歴史 – 最澄から始まる1200年の物語
最澄による創建
三千院の歴史は788年(延暦7年)、天台宗の開祖・最澄が比叡山に建てた小さなお堂「円融房」に始まります。当初は比叡山東塔(とうどう)の南側にあり、最澄が修行のために建てた庵でした。
最澄は804年に唐に渡り、天台教学を学んで帰国後、日本の天台宗を確立しました。三千院はその最澄ゆかりの地として、天台宗の歴史の中で特別な位置を占めています。
幾度もの移転
その後、三千院は幾度も場所を移しました。平安時代には京都市内の円融院に移り、その後も時代とともに様々な場所に移転を繰り返しました。
明治維新後の1871年(明治4年)、現在の大原の地に落ち着き、「三千院」という名称が正式に定められました。それまでは「円融院」「梶井門跡」などと呼ばれていました。
皇族との関係
三千院は代々、皇族や摂関家の子弟が住職(門主)を務める門跡寺院として、格式を保ってきました。そのため、建築や庭園、仏像など、すべてに洗練された美意識が反映されています。

必見スポット完全ガイド
1. 聚碧園(しゅうへきえん)- 客殿からの眺め
拝観受付を済ませて最初に目に飛び込んでくるのが、客殿を囲む美しい庭園「聚碧園」です。江戸時代の著名な茶人・金森宗和が修復に携わったと伝えられるこの庭は、立体的な構造が特徴です。
池泉観賞式庭園の美
聚碧園は池泉観賞式庭園で、客殿から眺めることを前提に設計されています。池を中心に、石組み、植栽が配され、遠近法を活かした立体的な景観が広がります。
春には桜、初夏には青もみじ、秋には紅葉、冬には雪景色と、四季折々の美しさを楽しめます。
お抹茶体験
別料金(500円程度)でお抹茶とお菓子をいただくことができます。縁側に座って庭園を眺めながらいただくお抹茶は、三千院訪問の特別な思い出となるでしょう。
2. 往生極楽院(おうじょうごくらくいん)と国宝・阿弥陀三尊像
三千院の本堂である往生極楽院は、平安時代後期(1148年頃)に建立された重要文化財の建造物です。
国宝・阿弥陀三尊坐像
堂内には、国宝指定の阿弥陀三尊坐像が安置されています。中央の阿弥陀如来像(高さ約2.3メートル)の左右には、観音菩薩と勢至菩薩が正座し、やや前のめりの姿勢で配置されています。
この独特の姿勢は「大和坐り」と呼ばれ、「早く人々を救いたい」という慈悲の心の表れとされています。両脇侍が正座している三尊形式は非常に珍しく、美術史上も貴重な作例です。
極彩色の天井画
往生極楽院の内部は、かつて極彩色で装飾されていました。現在は色褪せていますが、境内の「円融蔵」では、コンピューター技術で忠実に再現された極彩色の天井画を見ることができます。
創建当時の華やかさを想像しながら拝観すると、より深い感動を味わえます。
3. 有清園(ゆうせいえん)- 苔むす庭園とわらべ地蔵
往生極楽院を囲む池泉回遊式庭園「有清園」は、三千院の最大の見どころです。杉木立に覆われた緑豊かな苔のじゅうたんが広がり、その中に可愛らしいわらべ地蔵が点在しています。
苔のじゅうたん
有清園の最大の特徴は、約20種類以上の苔が織りなす美しい苔のじゅうたんです。杉の木立が作る木漏れ日の中、鮮やかな緑の苔が境内全体を覆っています。
湿度が高く日光が適度に入る大原の気候が、この美しい苔庭を育んでいます。雨の後は特に苔の緑が鮮やかで、幻想的な美しさを見せます。
わらべ地蔵
苔むす庭の中に、可愛らしい「わらべ地蔵」が点在しています。それぞれ異なる表情を持つお地蔵様は、合掌していたり、寝転んでいたり、笑顔だったりと、見る人の心を和ませてくれます。
苔むす庭を散策しながら、それぞれ異なる表情を持つお地蔵様を探すのも楽しみの一つです。フォトスポットとしても大人気で、多くの参拝者が写真を撮っています。
4. 弁天池 – 『女ひとり』の舞台
有清園内にある「弁天池」は、昭和の名曲『女ひとり』に登場する池として知られています。
「京都~大原 三千院~ 恋に疲れた 女がひとり~♪」
この歌詞で始まる『女ひとり』は、1965年に発表されたデューク・エイセスの名曲で、この曲をきっかけに三千院の観光客が増えたとされています。参道には歌碑も建てられており、今も多くの人々に親しまれています。
静かな水面に映る景色は、訪れる人の心を癒してくれます。
5. 金色不動堂
境内の一角にある金色不動堂には、金色不動明王が祀られています。護摩祈祷が行われる重要な堂で、こちらで御朱印もいただけます。
不動明王の力強いお姿と、堂内に漂う護摩の香りが、神聖な雰囲気を醸し出しています。
6. あじさい苑
例年6月初旬〜7月初旬に「あじさい祭り」が開催され、約3,000株のあじさいが境内を彩ります。小路あじさい苑では、青、紫、ピンク、白など様々な色のあじさいが咲き誇り、梅雨の時期の三千院を美しく彩ります。
7. おさな六地蔵
律川沿いに並ぶ六体のお地蔵様は、それぞれ異なる表情をしています。わらべ地蔵とはまた違った趣があり、こちらもお気に入りを見つけてみてください。

四季の魅力
春(3月〜5月)- 桜と青もみじ
春には桜が咲き誇り、境内を華やかに彩ります。また、5月から6月にかけての青もみじも見逃せません。境内全体を覆う鮮やかな緑は、紅葉とはまた違った清々しい魅力があります。
苔の緑と青もみじの緑が重なり合い、まさに「緑の楽園」のような美しさです。
初夏(6月〜7月)- あじさい
「あじさい祭り」が開催され、約3,000株のあじさいが境内を彩ります。梅雨の時期ですが、雨に濡れたあじさいと苔の美しさは格別です。
秋(11月中旬〜下旬)- 紅葉の名所
三千院は「日本紅葉の名所100選」に選ばれた大原エリアの中心的存在です。例年11月中旬〜下旬が見頃で、緑の苔のじゅうたんの上に散る紅い葉のコントラストは息をのむ美しさです。
10月下旬から約1ヶ月間「三千院もみじ祭」も開催され、多くの観光客で賑わいます。特に11月は通常より30分早く開門(8:30)され、朝の静寂な紅葉を楽しめます。
冬(12月〜2月)- 雪景色
雪が降ると、三千院は水墨画のような静寂な美しさに包まれます。雪化粧した苔庭とわらべ地蔵の姿は、冬ならではの風情があります。
拝観情報とアクセス
基本情報
住所:〒601-1242 京都府京都市左京区大原来迎院町540
電話:075-744-2531
公式サイト:https://www.sanzenin.or.jp/
拝観時間
3月〜10月:9:00〜17:00(最終受付16:30)
11月:8:30〜17:00(最終受付16:30)
12月〜2月:9:00〜16:30(最終受付16:00)
拝観料
一般:700円
中学生・高校生:400円
小学生:150円
団体割引:30名以上
アクセス方法
京都駅から(おすすめ):
- 地下鉄烏丸線で「国際会館駅」へ(約20分)
- 国際会館駅から京都バス19系統「大原」下車(約20分)
- 大原バス停から徒歩約10分 合計所要時間:約60分
京都駅から直通バス:
- 京都バス17・18系統「大原」下車、徒歩約10分
- 所要時間:約76分
その他の主要駅から:
- 出町柳駅前から:京都バスで約33分
- 四条河原町から:京都バスで約50分
注意:大原エリアは京都市内均一運賃区間外です。三千院専用の駐車場はありませんので、近隣の有料駐車場(普通車300〜500円程度)をご利用ください。
所要時間
境内散策のみ:約40〜60分
お抹茶体験を含む:約1.5時間
周辺寺院を含む:半日〜一日

周辺の見どころ
大原エリアには三千院以外にも魅力的な寺院が点在しています。
実光院(徒歩1分):秋から春まで咲く珍しい不断桜が見られます。
宝泉院(徒歩3分):「額縁庭園」と「血天井」で有名。客殿から眺める庭園が額縁のように見えます。
寂光院(徒歩25分):壇ノ浦の戦いで亡くなった安徳天皇の母・建礼門院ゆかりの寺。
来迎院(徒歩7分):大原声明を完成させた良忍上人が創建した寺院。
おすすめモデルコース
半日コース(3〜4時間):
- 三千院拝観(1時間)
- 実光院・宝泉院拝観(1時間)
- 大原の里散策・ランチ(1時間)
一日コース: 午前:三千院→実光院→宝泉院 午後:寂光院→来迎院
大原声明 – 日本音楽の源流
大原は「声明(しょうみょう)発祥の地」として知られています。声明とは、独特の節回しで唱えるお経のことで、謡曲や民謡、演歌など日本音楽の源流とされています。
三千院や周辺の来迎院、勝林院で声明の歴史に触れることができます。
訪問のコツと注意事項
ベストシーズン
紅葉:11月中旬〜下旬(最も混雑)
青もみじ:5月〜6月(比較的空いている)
あじさい:6月〜7月
服装と持ち物
- 歩きやすい靴:境内は坂道や石段があります
- 季節に応じた服装:市街地より気温が低いです
- カメラ:苔庭、わらべ地蔵、紅葉は必見のフォトスポット
混雑回避
- 紅葉シーズンは早朝(8:30開門直後)または平日がおすすめ
- 青もみじの季節は比較的空いています
撮影のコツ
- 苔庭のわらべ地蔵は午前中の木漏れ日が美しい
- 聚碧園は客殿の縁側から
- 紅葉は逆光を避けて撮影を
まとめ
三千院は、京都市街の喧騒から離れた静寂な里山の中で、日本の伝統美と自然の調和を体感できる特別な場所です。1200年以上の歴史を持つ門跡寺院として、国宝の阿弥陀三尊像、美しい苔庭、可愛らしいわらべ地蔵、そして四季折々の自然美が織りなす「東洋の宝石箱」を、ぜひご自身の目でお確かめください。
京都市街から少し足を延ばす必要がありますが、その価値は十分にあります。緑の苔のじゅうたん、わらべ地蔵の優しい表情、紅葉の美しさ、そして大原の里の静寂な雰囲気—三千院には、心を癒す要素が詰まっています。
京都を訪れる際には、ぜひ大原・三千院の静寂な美しさに心を癒されてみてはいかがでしょうか。
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